耐熱性、耐食性、電気絶縁性を備えるセラミックを活かしたキッチン用品を展開する京セラ株式会社。そして、家電製品、家具・インテリア、日本全国の名産品など幅広い商品を展開し、京セラ株式会社のキッチン用品も販売するショッピングサービス「ひかりＴＶショッピング」（運営：株式会社NTTぷらら）。

2021年12月、京セラとひかりＴＶショッピングは、両社が描く戦略とプロモーションにおける課題を解決するため、株式会社エビリー（以下、エビリー社）のYouTuberキャスティングサービスによるタイアップ施策を実施しました。京セラ株式会社の松岡 剛史 氏、平戸 貴明 氏、株式会社NTTぷららの北﨑 加代子 氏、松井 裕一朗 氏の4名に、YouTuberタイアップ施策の背景と流れ、その後の成果についてお話を伺いました。

「ひかりＴＶショッピング」と「しみこみシェフ」、それぞれの戦略とは

ーー 「ひかりＴＶショッピング」のサービス概要についてお聞かせください。

北﨑 加代子 氏（以下、敬称略）：弊社が運営する映像配信サービス「ひかりＴＶ」のお客様より「番組を録画したい」とのお声を受けて、2010年に、ハードディスク等テレビ周りの商品を中心としたECサイト「ひかりＴＶショッピング」をスタートさせました。当初は「ひかりＴＶ」のお客様を対象としたサービスでしたが、徐々にお客様層が広がり、商品ラインナップを拡げていきました。

ーー 「ひかりＴＶショッピング」の戦略についてお聞かせください。

松井 裕一朗 氏（以下、敬称略）：サービスの主力商品であったテレビやパソコンは、販売による売上げは大きいものの、一度購入されると壊れるまで長く使われる方が多く、例えばテレビですと、10年に一度という頻度です。また、初めて利用するECサイトでいきなり10万円台の商品を購入することは、心理的にハードルが高いことでもあります。

そこでお客様との接触頻度を高める目的で、日用品やキッチン雑貨、食品のような気軽に購入できる低単価商品のラインナップを拡充していくことになったのです。

ーー 今回「ひかりＴＶショッピング」で販売された「しみこみシェフ」についてお聞かせください。

松岡 剛史 氏（以下、敬称略）：「しみこみシェフ」は、鍋の中の圧力を下げることによって火を止めた後、温度をゆっくり下げて、しっかり煮込むことができる減圧調理鍋です。弊社の社名にもある「セラミック」が内面加工に使用されており、焦げ付きにくく、汚れも落としやすい商品になります。

普通の鍋で煮込む場合、常に火で加熱し続けなければならないため、省エネ調理が可能なことが商品の強みです。また、一般的な圧力鍋とも違い、長時間煮込む必要がないため、煮崩れが起きにくいことも特徴になっています。

ーー 「しみこみシェフ」の販売戦略についてお聞かせください。

平戸 貴明氏（以下、敬称略）：「しみこみシェフ」はホームセンターやスーパーマーケットといった、いわゆる一般量販店では販売しておらず、専門店、百貨店、カタログ、そして「ひかりＴＶショッピング」など、販路を絞って販売させていただいております。

この理由として、商品の良さ、素材の良さをしっかりお客様に伝えた上で、適正価格で販売したいという思いがあります。百貨店や専門店には、商品の良さをより丁寧に伝えてくれる販売員がいますし、カタログであれば商品の良さを記載することができます。

ツールとデータを活用し、定量・定性の両側面からタイアップするYouTuberを選定

ーー 「ひかりＴＶショッピング」で販売されている「しみこみシェフ」のプロモーションとして、YouTuberタイアップを選ばれた背景をお聞かせください。

平戸：「京セラ」という社名の認知度は高いものの、キッチン用品自体の認知度に課題を感じていました。しかし、多くの方にただ知られるのではなく、商品と素材の良さを丁寧に伝えることが重要です。

また、「しみこみシェフ」が比較的男性から人気があるため、プロモーションのターゲットを30〜50代の男性とし、男性視聴者が好むような商品の説明ができることも必要な要素でした。

こうした背景から、YouTuberタイアップであれば「しみこみシェフ」の良さを丁寧に説明しつつ、認知を獲得できると考えました。

ーー エビリー社からは、YouTuberタイアップはどのような提案があったのでしょうか。

エビリー営業担当：まずは弊社が提供しているYouTubeデータ分析ツール『kamui tracker（カムイトラッカー）』を活用して、定量的なデータを根拠にご提案させていただきました。ご提案するYouTuberの平均視聴回数や視聴者のデモグラフィックデータ（男女比率、年齢分布など）を基にしています。

定性面には、具体的には料理好きな男性に好まれそうな動画を投稿していること、料理の専門家目線で商材を説明できることを重視していました。

定量面と定性面から検討した結果、「COCOCOROチャンネル」さんとのタイアップをご提案させていただきました。また、タイアップ動画を二次利用する形でYouTube広告のプランニングについてもご提案しています。

YouTuberタイアップのKPIとしてはCPV（1視聴あたりのコスト）を中心とし、その上でどれだけのCV数、実際の購入数に繋がったかを計測しています。

北崎：ご提案の内容は、我々の意図をしっかりご理解いただいたものであり、かつ数値的なデータに基づいていて安心感がありましたので、ご提案の打ち合わせでは、即座に「お願いします」とお伝えしました。

また、当時の私はあまりYouTubeについて詳しくなかったのですが、YouTuberタイアップがどういうものかをゼロから教えていただき、大変進めやすかったことを覚えています。

タイアップ動画のテイストを通常の動画に合わせることで、企業案件感を打ち消す

ーー タイアップ動画の内容はどのように企画されたのでしょうか。

エビリー営業担当：普段投稿されている動画に合った動画を制作いただくように調整させていただきました。普段の動画とタイアップ動画のテイストが乖離すると、「COCOCOROチャンネル」さんを視聴しているファンから受け入れていただけないことがあるからです。

ーー 「COCOCOROチャンネル」さんへの第一印象をお聞かせください。

北崎：料理の流れを非常にロジカルに説明されているチャンネルで、料理好きな男性に好まれそうだと感じました。また、紹介する商品をただ褒めるだけではなく、正直な感想を伝えていらっしゃることに好印象を持ちました。

平戸：企業案件の動画は、どうしても商材のいいところばかりを取り上げてしまい、視聴者側もそれを「広告感が強い」と感じ取ってしまうこともあります。しかし「COCOCOROチャンネル」さんの場合、商材の短所を含めた感想を、嫌味のない正直な話し方で説明していただけたところがよかったです。

「COCOCOROチャンネル」さんとの打ち合わせでは、チャンネルのクリエイターの方が私たちの意図を汲み取ってくださり、前のめりで提案していただいたおかげで、こちらも気持ちよくスムーズに進めることができました。

期間中の販売数は200個超！ツール上で想定された約2倍の視聴回数を獲得

ーー YouTuberタイアップ施策の成果をお聞かせください。

北崎：YouTubeの概要欄に「ひかりＴＶショッピング」の「しみこみシェフ」購入ページのURLを記載し、あわせてクーポンも併記しました。

動画公開後は「ひかりＴＶショッピング」で多くの方にご購入いただきました。また、ひかりＴＶショッピングはYahoo!ショッピングや楽天市場といったECモールにも出店していますが、そちらにも波及的に広がり、多くの方にご購入いただきました。おそらく、動画を視聴された方が自ら検索して下さったのだと思います。

結果としては、「COCOCOROチャンネル」さんから商品の魅力をしっかり発信することができ、計測期間中の販売数は200個を超えました。

平戸：費用対効果という観点から、しっかり採算が取れた施策だったと思います。「しみこみシェフ」は高価格帯の商品とあって、なかなか数を売ることが難しい商品です。しかし、動画内でしっかり商品や素材の良さを説明いただいたことで、期待していた数量を売ることができました。

エビリー営業担当：『kamui tracker』上の数値では、動画投稿から30日後の「視聴評価」が「1.8」となっています。視聴評価とは、そのYouTubeチャンネルにおける任意の動画の視聴回数と、『kamui tracker』が算出している動画投稿時の「推定視聴回数」を比較したときの倍率を表したもので、「1.0」が基準です。今回の数値は、期待される視聴回数よりも2倍弱もの視聴回数を獲得できたことを示しています。

ターゲットを見定め、パートナー企業と施策を進めることが成果につながる

ーー 今後の展望についてお聞かせください。

平戸：「しみこみシェフ」だけではなく、弊社の他の商品の認知度も今後高めていきたいと考えています。今回の施策を例に、YouTubeを活用したプロモーションは今後も取り組んでいきたいですね。

北崎：昨今さまざまなECサイトが立ち上がっていくなか、「ひかりＴＶショッピング」をどのように特色付けていくべきかと考えたとき、動画によるプロモーションはひとつの強みになるはずです。

今回のYouTuberタイアップ施策のように、想定したターゲットに合った訴求を動画で表現して広めていくことは、「面白いことをやっている」と印象を与え、他社ECサイトとの差別化に繋がっていくと考えています。良い商品の魅力を、動画を用いて上手く伝えられるようにしていきたいです。

ーー YouTuberタイアップ施策を検討されている企業へ、アドバイスをお願いします。

松井：施策のターゲットがどのような動画を視聴したいのかとしっかり検討した上で展開しなければ、たとえ有名なYouTuberであっても期待した成果にはつながらないと思います。だからこそ、まずはターゲットをしっかり定めた上で企画を進めていくことが重要なのではないでしょうか。

松岡：商品の特徴と、選定するYouTuberの視聴者ニーズがマッチしていることが最も効率的なタイアップになると思います。エビリーさんのように定量的な提案をしていただけるパートナーと進めていくことが、認知の獲得や売上向上といった成果につながると信じています。

ーー ありがとうございました。