YouTubeチャンネル運用の開設準備・立ち上げ方法 後編
最終更新日 2023年5月31日
前編では、企業の「YouTubeチャンネル運用における目的の設定」についてお話しさせていただきました。本編では、後半部分の「企業がYouTubeチャンネルを開設するにあたって重要なコンセプト」について解説します。
目次
- YouTube開設前に必要な方向性の決め方
1.1.マーケットボリュームの調査
1.2.参入ジャンルのキーワード調査
1.3.具体的なチャンネルコンセプトを決める - ベンチマーク選定とKGI・KPI設計
2.1.重要ベンチマークチャンネルの選定と詳細分析
2.2.KGI・KPIの設計
2.3.動画の大まかな「型」を考えておく
1.YouTube開設前に必要な方向性の決め方
YouTubeチャンネル運用における目的の設定や、必要な運用体制などを把握したら、実際に企画段階へ入っていきます。チャンネルを開設するにあたって重要なのは「コンセプト」です。YouTubeチャンネルの「コンセプト」とは何でしょうか。
それは、
- 誰をターゲットにし
- どのようにマネタイズし
- どんなコンテンツを提供するか
であると考えられます。これらを考える上で、「市場調査」は重要な役割を果たします。ではまず、具体的な市場調査の方法について説明します。
1.1. マーケットボリュームの調査
1.1.1. 参入するジャンルの状況を把握する
参入するカテゴリで直近に開設されたチャンネルの分布を分析しましょう。目安は3年以内です。登録者別の割合を見ることにより、目標値が現実的なのかどうか、そもそも参入するべきジャンルなのかなどを事前に調査していきます。
1.2. 参入ジャンルのキーワード調査
1.2.1. 参入ジャンルのキーワード選定
参入を想定しているジャンルで一定の視聴回数を獲得している動画に含まれているキーワードを抽出します。抽出された特徴的なキーワードを、切り口の参考とすると良いでしょう。
1.2.2. キーワードの要素分解
例えば「料理」や「グルメ」などある程度特定されたジャンルで投稿していくとしても、その中にも細かいニーズが存在しています。ニーズの違いはキーワードに現れるため、ジャンルからさらにキーワードに絞り込んでコンセプトを決めていく必要があります。
単純な出現回数だけではなく、他動画にも同キーワードが出てきているのか出現頻度なども加味して要素分解を行っていきます。
1.2.3. キーワードの需要と供給
キーワードごとの投稿数と視聴回数を測定することで、需要と供給のバランスを分析します。需要は多いが供給数がまだ伸びていない「空きジャンル」を探していきましょう。
調査にあたって「kamui tracker(カムイトラッカー)」の「キーワードアドバイス」も活用できます。この機能では、あるキーワードが含まれる動画の平均視聴回数、投稿数、直近の総視聴回数がわかります。
1.2.4. 季節ごとの伸びる企画を分類
さらに応用して調査を行う場合、季節ごとに伸びる企画も分類すると良いでしょう。例えば、料理系の場合、通常より視聴回数の伸びた動画を抽出して季節ごとにその食材やレシピをピックアップするなどして調査を行います。
ここまでで市場調査ができたら、調査結果を踏まえて具体的なコンセプトを考えていきます。「ターゲット」と「マネタイズ方法」、そして「コンテンツ内容」を決めていきます。
1.3. 具体的なチャンネルコンセプトを決める
参入すべきマーケットと扱うキーワードが調査できたところで、ここからは具体的な自社のチャンネルのコンセプトを決めていきましょう。具体的なコンセプトは次の順番で決めていきます。
1)ターゲット
2)マネタイズ方法を選択
3)コンテンツ内容
それでは、この順番に沿って説明していきます。
1.3.1. 誰をターゲットにするか
誰に向けたYouTubeチャンネルにしていくのかによって、コンセプトは大きく左右されます。
まずは、「自社の既存事業と関連させるのか、それとも新規事業として始めるのか」を考えるのがよいでしょう。
自社の既存事業と関連させるのであれば、自ずと既存事業の顧客とYouTubeチャンネルのターゲットは重なってくるはずです。もちろん、既存事業の顧客の中でもYouTubeでどこを狙うのかは考える必要があります。
新規事業として始める場合は、市場調査により「まだYouTube上で満たされていないニーズ」を見つけ、そこに参入していくことが基本戦略となります。
1.3.2. 企業のマネタイズモデル
事業としてYouTubeチャンネルを開設して運営していく場合には、何らかの形でマネタイズをしていく必要があります。前編1.1で説明した「企業チャンネルをやる2つの目的」に沿ってマネタイズの方法を考えます。まずファンをつくり、そこからどうやってマネタイズしていくのか、その部分を解説していきます。
a. 本業誘導型
YouTubeで獲得したファンが、本業の顧客になることで収益を得るマネタイズモデルになります。先述した目的の通り、企業チャンネルの多くがこのモデルになるかと思います。直接的に本業へ誘導するというよりは、ファンが自然に本業の事業に関心を持ち、流入することを期待するイメージです。個人事業主として活動しているYouTuberにもこのタイプが多いです。
例:マコなり社長
b. メディア型
特定のジャンルの動画を配信し主に企業とのタイアップで収益を得るモデルになります。「Webメディア」「雑誌メディア」と同じようなメディアのYouTube版であると考えるとわかりやすいです。
コンテンツに軸が置かれていることが特徴で、特定のコンテンツに興味のある視聴者が多いことからタイアップを獲得しやすいといえます。固定の演者がいたり、複数の演者が交代でMCを務めるなどの形があります。
例:スロパチステーション
1.3.3. どんなコンテンツを提供するか
どのようにマネタイズするかも決まってきたら、次はYouTubeチャンネルで配信するコンテンツ内容の全体方針を考えます。
この時点では一つひとつの動画の企画というよりは、「チャンネルを通して変わらないもの」を決めていくことが重要です。
具体的には、
- 世界観
- ストーリー
- 演者
- 視聴者に与えるベネフィット
が挙げられます。
これらについて詳しく説明します。
◆「世界観」とは、チャンネル全体が描く世界を言語化したもの
例えば、「北欧、暮らしの道具店」というチャンネルは、世界観が非常にうまく作られた企業のYouTubeチャンネルであるといえます。そもそもの母体のECサイトの「フィットする暮らし、つくろう」という世界観が、YouTubeでも一貫して表現されているのだと感じます。
◆「ストーリー」とは、視聴者に対する「なぜこのチャンネルをやっているのか」という意義づけ
例えば、個人のYouTuberであれば「将来自分のブランドを持ちたい」などといった夢などがモチベーションの源泉にあると、自然とその目標に向かうチャンネル設計になりますし、応援する理由があるのでファンもつきやすくなります。
企業であれば、企業のビジョンやミッションとYouTubeチャンネルを関連付けることなどにより、ストーリーを描けると思います。「ストーリー」があると、そのジャンルがレッドオーシャンになって似たようなチャンネルが増えてきても、「このチャンネルだから応援する」というファンが維持されやすいでしょう。
◆「演者」にファンがつく
YouTubeは他のSNSと同じく「人」のメディアなので、チャンネルに演者が登場し、その演者に対してファンがつく、という構図が基本となります。企業チャンネルで企業の宣伝をしても、ファンはつくれません。ファンは人につくのです。もちろん特定の演者がいなくても人気のあるチャンネルはありますが、やや例外的で難易度が高いものと言えるでしょう。
また、VTuberや漫画キャラクターなどの非実写の演者である場合もあります。
◆「視聴者に与えるベネフィット」とは、チャンネルを通して視聴者にどんな利点を提供するかということ
例えば、「楽しく笑顔になれる」「欲しかった情報が手に入って便利」「一緒に成長できる」など、さまざまなものがあるはずです。「情報」と「感情」のどちらか(または両方)の観点で考えてみるのがよいと思います。
これら4つのうち、自社のチャンネルに合った「変わらないもの」を決めることはできたでしょうか?チャンネルを通して変わらないものが決まったら、次はもう少し具体的にユーザーがチャンネルを視聴するまでとその後の狙うべきプロセスを考えてみましょう。
1.3.4. ユーザー(カスタマー)ジャーニー
「カスタマージャーニー」といえば、ビジネスの世界でいう、顧客の行動・思考・感情のプロセスを表したものです。この考え方をYouTubeでも「視聴者の行動・思考・感情のプロセス」=「ユーザージャーニー」として取り入れてみましょう。
例えば、以下の図は「ダイエットしたい人向けの自宅トレーニング」のチャンネルの例です。
まず、最初「太ってきた……」という悩みを抱える人には、どんな動画だったら興味を持ってもらえるでしょうか?
どうやったら、「自分でもできそう」と思ってもらえるでしょうか?
効果が出るダイエットになるには、どんな内容が必要でしょうか?
継続して観たくなる企画は、どんな企画でしょうか?
答えはひとつではないはずです。
自分のチャンネルの特徴や視聴者の現状、悩みや理想に向き合い、ユーザージャーニーマップを歩んでもらえるような企画を作っていくことが重要です。
「YouTubeチャンネルを伸ばす」というと、どうしても「アルゴリズムをハックする」ような方法論が流行ったりしがちですが、いつでも動画の先にいるのは「人」です。
人の状況、心理、行動に寄り添ったコンテンツが、最終的に「伸びる」ものになるはずです。
ぜひあなたのチャンネルの「ユーザージャーニーマップ」を作ってみてください!
2.ベンチマーク選定とKGI・KPI設計
2.1. 重要ベンチマークチャンネルの選定と詳細分析
1.3.で述べたように全体方針が決まったら、次は一つひとつの動画のコンテンツ内容を決めていく必要があります。そこで競合となるチャンネルや、目指しているチャンネル(ベンチマーク)の企画で伸びているものを調査し、自分のチャンネルの企画に活かすのが良いでしょう。
例えばフィットネス関係の企画を探したい場合は、YouTube上で「フィットネス」「ダイエット」などと検索し、そこで出てくる動画や、その動画を出したYouTuberの動画をさらに調べるなどして調査していきます。
「kamui tracker」では、例えば以下のように企画をリサーチすることが可能です。
このようにして伸びている動画をまず探しますが、もちろん重要なのは動画の中身です。
「なぜこの動画が伸びているのか」を要素に分解して考えます。
企画、構成、飽きさせない工夫、行動したくなる仕掛け、楽しくなる演出、話し方、編集の仕方、BGMや効果音、音質や画質、動画の長さ・・、多くの気づきがあるはずです。
こういった分析を行なっていくことがとても重要です。
そして、「伸びる要素」の仮説ができたら、次に自分のチャンネルに活かしていきます。
ここで重要なのが、「かけ算で企画を生み出す」ということです。
もちろんですが、人気の動画の企画をそのまま自分のチャンネルでやったら伸びる、というわけではありません。
伸びた要素と自分のチャンネルの強みを掛け合わせ、企画を考えていきましょう。
2.2. KGI・KPIの設計
続いてKGIとKPI設計についてです。
目的によってKGIとKPIは変わってきますので、自社に合わせた設計をしていきましょう。
今回は目的に合わせた指標の一部をご紹介します。
※広告収益を目的としている場合の注意点
YouTubeで広告をつけるには条件があるため、KPI設定は少なくとも2段階に分ける必要があります。
第一段階:最低限、登録者数1,000人以上、視聴回数4,000時間以上(1年間)、YouTubeパートナープログラムの規定に沿っていれば、収益申請ができる
第二段階:ベンチマークしているチャンネルの成長率や視聴回数を参考にして、登録者数と視聴回数の目標を期間ごとに設定する。
2.3. 動画の大まかな「型」を考えておく
ある程度コンセプトとコンテンツの内容の方向性が決まったら、実際の動画の作り方について検討していきましょう。
一つひとつの動画内容はその都度考えていきますが、事前にいくつかの動画の「型」を考えておくと、「何を出せばよいかわからない」ということが起こりづらくなります。
これを考えるひとつの方法として、「近いジャンルの動画の構成を分割してみる」というものがあります。いきなり「企画を考えよう」としても難しいので、分割して構成を捉えるようにすると考えやすく、また目的への誘導もしやすくなります。2.1.で行ったベンチマークのチャンネルを選定したら、理想となる動画をベースとして動画の構成を分割して捉えてみましょう。
例えば料理系のチャンネルであれば、
理想(出来上がった料理を提示)→ハウツー(レシピや作り方)→メリットと課題感の共有(調理工程)→目的への誘導
という流れで見せられると良いでしょう。
また、「共感や独自性はどこから生まれるのか?」という定性的な要素に関しても抽出し、自社の動画へどのように活かせるかを考えてみましょう。
-今回はYouTubeチャンネルを開設するまでの企画段階で、必要なポイントやノウハウを前編・後編に分けてお伝えさせていただきました。YouTubeチャンネルを立ち上げる準備はできましたでしょうか?
次回のコンテンツ記事「YouTubeチャンネルの伸ばし方 前編・後編」では、チャンネルを伸ばすにあたっての最適な運用と分析、そして更なる成長を目指すための戦略についてお伝えいたします。
お楽しみに!
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